【素人奮闘記】ノートPCにArch Linuxを入れてみた:黒い画面への絶望から理想のデスクトップができるまで
「Linux触るならUbuntuやLinux Mintが初心者向け」
それは百も承知でした。しかし、ネットで見かける**超絶スタイリッシュな半透明デスクトップ(いわゆるUnixporn)**や、ミニマルに無駄を削ぎ落とした環境への憧れが抑えきれず、完全に初心者の身でありながらサブ機のノートPC(Chuwi MiniBook X)に Arch Linux をインストールしてしまいました。
今回は、知識ゼロ寄りの状態からArch Linuxを導入し、実際に日常使いできるレベルまでセットアップする中で味わった「リアルなつまずき」と「やってみて分かった魅力」をまとめます。
1. なぜ初心者がいきなりArch Linuxなのか?
結論から言うと、**「最初から余計なものが何ひとつ入っていない、自分だけのOSを作ってみたかった」**からです。
Ubuntuなどは最初からブラウザもオフィスソフトも揃っていて親切ですが、裏で何が動いているのか分かりづらく、「不要なプリインストールアプリを消す作業」が発生しがちです。 一方、Arch Linuxは**「本当に最小限の土台」**だけが提供され、
- 日本語入力はどうする?(fcitx5を入れる)
- 音を鳴らすには?(pipewireを入れる)
- 画面の見た目は?(HyprlandとWaybarで組む)
と、すべて自分で選んで積み上げていくスタイル。難易度は高いですが、**「PCの仕組みを理解しながら自分専用マシンを組む感覚」**は自作PCにも通じる圧倒的なロマンがありました。
2. インストール:archinstall という救世主
昔のArch Linuxといえば、「真っ黒な画面でディスクをパーティション分割し、コマンドを手打ちして手動構築する」という修行のような儀式が必要でした。
しかし現在の公式インストーラーには archinstall という対話型の自動セットアップスクリプトが用意されています。
# インストールUSBから起動後、このコマンドを打つだけ
archinstall
矢印キーで言語、キーボードレイアウト、インストール先ディスク、デスクトップ環境(あるいはMinimal)を選び、ユーザー名とパスワードを決めるだけで、自動的にベースシステムが組み上がります。
「なんだ、Archも拍子抜けするくらい簡単じゃん!」……と、この時はまだ呑気に思っていました。
3. 洗礼:黒い画面(CUI)と最初の壁
再起動してUSBを抜くと、画面に現れたのはおなじみのGUIではなく、無機質な黒い画面と点滅するカーソルでした。
minibook login: _
マウスカーソルすら存在しない世界。「ここからどうすればいいんだ……?」と完全に立ち尽くしました。
ここから、スマホで公式Wiki(ArchWiki)を必死に調べながら、1つずつ必要なパーツを組み込む旅が始まりました。
① インターネットが繋がらない
有線LANポートがないノートPCのため、Wi-Fi接続が必須です。CUI用のネットワーク管理ツール nmtui(NetworkManager)を呼び出し、ターミナル上でSSIDを選んでパスワードを入力してようやく疎通しました。
② パッケージ管理(pacman)との出会い
Ubuntuの apt にあたるのが pacman。
sudo pacman -Syyu # システム全体の更新
sudo pacman -S package # パッケージの導入
このコマンドが異様に軽快で、パッケージが秒速で落ちてくるスピード感に感動しました。
③ 日本語が出ない・打てない
初期状態では日本語フォントすら入っていないため、Webページを開くとすべての文字が「□□□(いわゆる豆腐)」になります。
# 日本語フォントの導入
sudo pacman -S noto-fonts-cjk noto-fonts-emoji
# 日本語入力エンジン(fcitx5 + mozc)の導入
sudo pacman -S fcitx5-im fcitx5-mozc
フォントを入れて初めて画面に日本語が浮かび上がった瞬間は、謎の感動がありました。
4. デスクトップ環境の構築:Hyprlandの世界へ
一般的なデスクトップ(GNOMEやKDE Plasma)を入れても良かったのですが、せっかくのArchなので、現代的なWaylandタイリングマネージャーである 「Hyprland」 を選びました。
ウィンドウを開くと自動で画面が半分に分割され、キーボード操作(Super + Q でターミナル、Super + M で終了など)だけでスピーディに画面を操作できるシステムです。
さらに、設定ファイル(~/.config/hypr/hyprland.conf や waybar/style.css)のテキストを書き換えるだけで:
- ウィンドウの角丸や影の強さ
- すりガラスのような背景ぼかし(Blur)
- タイトルのグラデーション発光
がリアルタイムに反映されます。CSSや設定ファイルをいじるのが好きな人にとっては、時間を忘れて熱中してしまう底なし沼でした。
5. 初心者がノートPCにArchを入れて感じたメリット・デメリット
デメリット(覚悟がいること)
- すべてが自己責任: 何かトラブルが起きても「OKボタン」を押して直る親切なダイアログは出ません。エラーログを読んでググる力(またはAIに投げる力)が必要です。
- ハードウェア特有の癖: 画面の自動回転や360度ヒンジの検知など、ノートPC固有の機能はスクリプトを自作してWaybarと連携させるなどの工夫が必要でした。
メリット(やって本当によかったこと)
- 圧倒的に動作が軽い: 余計なバックグラウンドサービスが一切動いていないため、メモリ消費量が極小。バッテリー持ちやファン音も劇的に改善しました。
- PCの仕組みが急激に理解できる: 「オーディオサーバー(PipeWire)」「ディスプレイマネージャー」「入力メソッド(fcitx5)」といった、普段OSが裏で何をしてくれているのかが手に取るように分かります。
- 何より愛着が湧く: 壁紙1枚、フォント1つ、ウィンドウの透明度に至るまで自分で選んだ環境なので、ノートPCを開くたびにテンションが上がります。
まとめ:怖がらずに挑戦してみてほしい
「Arch Linuxは上級者向け」というイメージが強いですが、今は archinstall がありますし、何より ArchWiki という世界最高峰のドキュメント が日本語を含めて完備されています。困ったときのログをAIに見せながら進めれば、初心者でも十分に実用的なデスクトップを組み上げることができます。
余っているサブ機のノートPCがあるなら、週末の自由研究としてArch Linuxを入れてみてはいかがでしょうか。真っ黒な画面から自分好みのOSが立ち上がったときの快感は、他ではなかなか味わえません。